「営業と残業は切っても切り離せない関係にある」と考える社会人は多いですが、よく仕事の内容を見直してみると残業なしでもこなせるケースは珍しくありません。むしろ、残業が長引くほど「残業代」も増えていき、会社に負担をかけているという意識は持ちたいところです。もちろん、正当な残業に対しては残業代をもらうべきですが、不要な残業を増やす必要はありません。ここでは、必要な残業と不要な残業を区別しながら、営業職の残業について解説していきます。

営業だから残業が多いとは言い切れない

営業職の残業の中には、営業だから仕方がないといえるものもあります。しかし、無駄な残業も少なくありません。たとえば、時間配分を間違えて、仕事が終わらなくなっているケース、スキル不足で時間内に終わるはずの作業が終わらなくなっているケースは未然に防ぐことができる残業でしょう。また、労働時間内に生産性のない行動で時間を取られている社員もいます。愚痴を言い合っているうちに無駄な時間が過ぎていったり、タバコなどの休憩を取りすぎて残業が起きていたりするなら、1日のスケジュールを見直してみる必要があります。
多くの企業では残業が多いからといって「この社員は頑張っている」とは評価しません。むしろ、時間の使い方を間違っている社員として低い評価を下すところもあるのです。

営業職としてやむを得ない残業

営業職としてやむを得ない残業としては「外回りのための資料や日報の作成」が挙げられます。資料や日報は期限が決められているため、「定時になったからまた明日」とはいかない仕事です。残業してでも期日までに仕上げなければなりません。
また、顧客からの宿題に対する回答の作成など、外回りに付随する仕事は避けて通れません。特に「明日までに回答します」と期限を決めてしまった場合には顧客を待たせられないので、残業してでも責任を全うする必要があるでしょう。
商談を兼ねた会食や接待も営業職には欠かせない残業に当たります。顧客を確保するためには日々のコミュニケーションが非常に大切です。時間外であっても親睦を深めるチャンスがあるなら、積極的に参加するのも営業の仕事に含まれます。

外回り営業はみなし残業の対象?

なかには「外回り営業はみなし営業だから、いくら残業しても残業代は発生しない」と思い込んでいる企業があります。しかし、事業場外みなし労働時間は例外規定のため、適用されるための要件が細かく決められています。外回り営業が事業場外労働であることは要件に適用していますが、「使用者が実労働時間を把握したり算定したりするのが難しいケース」という要件に当てはまらない場合もあるので注意が必要です。
特に、営業責任者など上司が同行しているケースや、訪問先や訪問時間が特定されるケースは実労働時間の把握や算定ができるため、事業場外みなし労働時間とはいえません。単に残業代を節減するためにみなし労働時間制度を採用している企業は、労働基準法に抵触する恐れがあるので注意しましょう。

外回り営業にも残業代発生の可能性あり

外回り営業を続けている社員に対しても、労働時間外で働いた分の残業代がつく可能性があります。裁判上も、みなし労働時間制の適用に否定的な判例が多く、「外回り営業はいくら働いても残業は一定」という考え方は健全な経営を目指すうえで好ましくありません。
また、事業場での労働に対しても「みなし労働時間制」を適用している企業は少なくありません。しかし、本来なら残業代は時間外労働に対して、労働基準法にのっとり算出される報酬です。たとえ従業員が受け入れていたとしても、事業場での「みなし労働時間制」は法律に抵触する恐れがあります。
営業職だから残業代がつかないと決めつけずに、場合によってはつくケースがあることを踏まえておきましょう。そして、企業側も営業職として働く本人も無駄な残業を減らすよう努力するのが肝心です。