急に仕事量が増えてきたなど忙しくて手が回らないときに便利なのが「アウトソーシング」や「人材派遣」です。どちらも自社の社員以外に代わって仕事をしてもらう点については同じであるため、それぞれのメリットやデメリットについて混同してしまう人もいるでしょう。しかし、この2つには異なる点もいくつかあるため、自社の置かれている状況によって使い分けることが重要です。ここではアウトソーシングと人材派遣の違いや注意点などについて解説します。
アウトソーシングと派遣の違いとは?
アウトソーシングと人材派遣の決定的な違いは「業務をどこでやるか」です。アウトソーシングはアウト(外部)とソーシング(資源などを利用する)といった言葉で構成されているとおり外部の会社へ業務を切り出して代わりに行ってもらうことを意味します。それに対して人材派遣は派遣会社に依頼して希望に沿った人材を派遣してもらい、自社の業務をしてもらうことです。
アウトソーシングの代表的な例としては郵便物の発送代行があります。依頼主側は代行を依頼する業者に対して郵送物や宛先などを教える必要はありますが、発送業務そのものは代行業社が行います。それに対して人材派遣の代表的な例としては産休などの一時的に仕事を休む人の代わりに利用するケースがあります。休暇を取得する人の代わりに社内に来てもらい、業務を行ってもらうのです。
アウトソーシングと派遣の使い分け方
アウトソーシングの特徴は「業務を外部へ依頼する」ということです。そのため依頼する業務が複雑でその都度打ち合わせを要するようなものには向いていません。アウトソーシングに依頼するのであれば「定型的」かつ「定期的に発生する業務」を依頼するのがよいでしょう。郵便物の大量発送などのように専用の機械や施設がないとかなりの労力を要する業務にも活用されます。自社にノウハウがない業務であれば、アウトソーシングを利用した方がコスト面で安くすむこともあります。また仕事を依頼するということは自社の持っている情報を渡すということです。そのため、「社外に持ち出せる業務」であるかどうかも依頼するときの重要なポイントだといえます。
派遣の特徴としては「一定のレベルである人材が社内に来てくれる」ということです。つまり、急な退職などで人員不足に陥ったが他の社員を育てる時間がなく「すぐに補充したい」ときに便利だといえます。また、アウトソーシングと違って社内にいるためコミュニケーションがとりやすいです。そのため「イレギュラー業務が多い」「直接指示をする必要がある」「継続的な業務内容ではない」などといった仕事にも向いています。他にも業務を社内で完結させるため、守秘義務などの観点から社外へ持ち出せない仕事を処理してもらうためにも有効だといえるでしょう。
2つのサービスを利用するときの注意点
人材派遣を制限する「労働者派遣法」は2015年9月に改正されており利用するときはいくつか注意しなければいけません。注意点の1つ目は「同一の事業所では最長3年間」までしか働けない(事業所単位の期間制限)ということです。また、それとは別に同一組織で働けるのも最長で3年まで(個人単位の期間制限)となっています。つまり、どれほど優秀な人材が来てくれても3年経過すると後任に来てもらう必要があります。注意点の2つ目は「派遣契約」に定められている業務しか行えないという点です。イレギュラーな事態が発生しても契約外の業務を依頼することはできません。これらの注意点を踏まえて人材派遣は「あくまで人員の一時的な補充である」ということを忘れずに利用するとよいでしょう。
アウトソーシングの注意点としては外部への委託という形になるので一人ひとりに細かな指示ができないという点です。担当者同士で打ち合わせを行うことはできるでしょうが、実際に業務をこなす人に指示できるケースはあまりありません。誰でもできるような定型的な仕事を依頼するのが無難だといえます。
上手く使い分けて活用しよう
アウトソーシングと人材派遣はともに「自社以外の人間に仕事を託す」という意味においては同じです。しかしアウトソーシングは外部へ仕事を持ち出して行うため、より定型的な業務が向いているのに対して、人材派遣はよりコミュニケーションをとりながら行った方がよい業務に向いています。どちらにも一長一短があるため、どちらが良いとは一概には言い切れません。ただし間違った利用方法をしていては費用対効果の面で自社に損害を与えてしまいます。それぞれのメリット・デメリットをよく理解したうえで、状況に応じて使い分けることがベストだといえるでしょう。