ビジネスシーンで売り物になるのは「物」だけとは限りません。人間による「労力」も立派な商品になりえます。顧客に対し労力を提供する仕事には「アウトソーシング」や「人材派遣」といった種類があります。しかし、この2つは往々にして混同されやすい事業です。交渉の場で混同したまま話を進めてしまうと、後からトラブルを招きかねません。ここでは、「アウトソーシング」と「人材派遣」の違いについて詳しく解説していきます。
アウトソーシングのシステムについて
アウトソーシングとは「外部委託」という言葉で呼ばれることも多いビジネスの形です。たとえば、ある会社から受注した仕事の一部に自社では実現できない技術が必要だったとします。そんなとき、アウトソーシングによって別の会社に一部だけを請け負ってもらうことが可能です。
また、技術的には可能でも自社で行うだけの人手や時間を割けないケースにもアウトソーシングは利用されます。アウトソーシングのメリットはなんといっても自社の労力を大きく節約できる点にあります。また、自社に欠けている要素を外注企業に補ってもらい、顧客の要望に近い納品を行えます。
人材派遣のシステムについて
人材派遣とは派遣社員やアルバイトを管理している会社に依頼して、期間限定で必要な労力を招聘するビジネスの仕組みです。たとえば、繁忙期で社員全員がキャパシティを越え、このままでは納品が間に合わない状況が訪れたとします。そんなとき、派遣社員を大量に招き日常業務を手伝ってもらうことで正社員たちの負担を軽くします。
人材派遣の依頼主は派遣会社に報酬を払いますが、多くの場合で派遣社員への給料を払う必要はありません。派遣社員の給料は派遣会社から支払われるからです。人件費を大幅に削減しながら労力を一時的に確保できる手段として定着しています。
アウトソーシングを利用したいケース
アウトソーシングがおすすめなのは「自社では及ばない分野について労力を必要としているケース」です。たとえば、印刷会社がクライアントからイベントの宣伝を請け負ったとします。しかし、チラシだけでなくネットで流す宣伝動画も一緒に依頼されました。印刷会社には映像制作のノウハウはありません。こんなときは、映像制作会社や広告代理店などにアウトソーシングをして、クライアントの要望を代行してもらいます。ただし、アウトソーシングにおいては外注先の状況に強く干渉できないため、緻密なコミュニケーションを重ねてすれ違わないようにしましょう。
人材派遣を利用したいケース
人材派遣がおすすめなのは「自社の専門分野について労力のみを必要としているケース」です。たとえば、食品会社でクリスマス用の商品が大量に受注されたとします。しかし、例年よりもはるかに多い受注数だったので、現状の工場員だけでは仕事をこなせません。そこで、一時的に派遣社員を招き、労力を確保するのが「人材派遣」です。
人材派遣のメリットはアウトソーシングと違い、自社のノウハウを維持したまま、大量の仕事量をこなせることです。ただし、派遣社員を教育するための労力は割かれます。経験の浅い人材でもすぐに仕事へと慣れられるだけのカリキュラムの確立は必要でしょう。
アウトソーシングと人材派遣の違いを知ろう
アウトソーシングは「他社に仕事を依頼する」、人材派遣は「他者から労力のみを依頼する」と違いを覚えておけば大まかな部分では間違いがありません。また、アウトソーシングでは依頼した仕事について管理がしにくくなりますが、人材派遣では労力を管理下におけます。つまり、「他社の労力を一時的に利用する」のは同じでも、他の部分では大きな違いがあるシステムです。ビジネスシーンで両者を混同していると恥をかくばかりか、致命的なミスの原因にもなりえます。正しく違いを理解し、顧客への効果的な提案につなげられるようにしましょう。