営業職に就く上司の中には「ノウハウをいかに部下へ教えるか」で悩んでいる人も少なくありません。経験や能力がまだ成長過程にある部下には、営業ノウハウを深く教えたくても理解してもらえない場合があります。ただし、ノウハウの伝授には段階とコツがあり、あせらずにしっかりと教育していけば着実に部下は成長していくでしょう。この記事では、営業職の上司が部下にノウハウを伝えるためのコツや注意点について詳しくまとめました。
営業の流れをプロセスに分ける
伝えたい営業ノウハウは営業の流れの中の各プロセスにあると考えられるため、まずは普段行っている営業の流れをプロセスに分けて説明できるようにします。最初は「動機付け」です。「なぜこの営業を行うのか」の根本的な動機を持たせ、意識を高めましょう。そして、「ニーズを明確化」します。顧客が現状に抱いている「不満」や「需要」をリサーチしてニーズを絞り込みます。ニーズが分かれば、そこに合う最適な方法の提案ができます。顧客の予算や納期に合わせてニーズを魅力的な提案に落とし込みましょう。提案においては「相手の疑問や不安を解消」する意識が重要です。予想される質問については事前にシミュレーションしておくと提案の説得力が高まります。最終的に価格や納期の調整、契約の締結などのクロージング作業を実行して、一連の営業の仕事は締めくくられます。
ノウハウを活かせるシチュエーションを考える
営業ノウハウといっても、万能なものはないはずです。特定の状況下では効力を発揮するノウハウも、別の状況ではまったく応用できないケースが珍しくありません。部下に対しては教えているノウハウが「どのようなシチュエーションで活かせるものなのか」を整理して伝えましょう。
たとえば、飛び込み営業のときに、表に出てきてもらうためのノウハウと、ダイレクトメールを送ったときに読んでもらうためのノウハウは必要とされるシチュエーションが異なります。飛び込み営業では「初対面の相手に一瞬で信頼されなくてはいけない」というシチュエーションです。一方、ダイレクトメールでは「少なくとも過去に接点のある顧客が広告内容に興味を持つよう工夫しなければいけない」というシチュエーションです。営業にとって求められるノウハウは一つではないのです。
ノウハウより先に心構えを理解させる
正しいノウハウを教えても、それを使いこなせるかどうかは営業に対する心構えによって変わってきます。ノウハウを活用するためにはどのような心構えで営業することが必要なのかもきちんと部下に伝えましょう。
いわゆる「自分本位の営業」ではノウハウを利用しても売れるようにはなりません。自分本位の営業は、「売る側の都合」だけを押し付けがちなので顧客の心をつかみにくいからです。営業に求められているのは「顧客本位」の心構えです。「顧客の問題は何か」に関心を持てば、特定の商材に頼らずに「より適切な商材は何か」を探せます。顧客の気持ちになれば、提案に対して顧客が抱く疑問や不安に寄り添えます。「話し上手」よりも「聞き上手」になって顧客から情報を引き出せるのが「ノウハウを活かせる営業」の条件です。
ノウハウは伝えるタイミングも重要
営業ノウハウは自分で苦労して身につけることも大事です。また、営業の苦労を知らない段階で何もかもノウハウを教えてしまうのはよくありません。頭では理解していても気持ちが追いついていないので、単に「上司の経験談を聞かせてもらった」程度の意識しか持てないのです。
ノウハウはタイミングを見て伝えることが大事です。初めて顧客を訪問したとき、初めて自分で見積もりを作ったとき、初めて担当を持ったときなど段階に応じて「ノウハウを伝えるべきタイミング」が来るはずです。入社したてのタイミングで「商談のコツ」を聞くより、顧客訪問してから聞く方がより実感をともなって伝わるでしょう。一方で、一から十まで上司がノウハウを教えるのではなく、部下が自分で気づくように見守るのも肝心です。部下と信頼関係を保ち、着実に成長できるような環境を整えてあげましょう。