心理学の世界には、ビジネスに応用できる原理や法則が転がっています。営業職なら心理的なテクニックを用いて顧客を攻略できるかもしれません。進展がない顧客との関係にやきもきしているようなら、思い切って心理的な揺さぶりをかけてみましょう。中でもおすすめしたいのが「一貫性の原理」です。人間の深層心理を応用した原理だけあって、即効性の高いテクニックだといえます。ここでは、「一貫性の原理」について詳しく解説します。
一貫性の原理とはどんな心理を指す?
「一貫性の原理」とは、「人間は自分で決めた法則を最後まで守りたがる」という原理です。人間とは本来、矛盾を嫌う生き物です。誰かと会話していて「自分はこういう性格である」と口にしてしまったら、少々前言から外れるような話題になっても無理をして整合性をとろうとします。これが「一貫性の原理」です。
もちろん、ストレスを伴ってまで「一貫性の原理」を発動させようとする人間はごくわずかです。しかし、人は無意識下で許容できるレベルであれば多くの場面で「一貫性の原理」に従って行動しています。「一貫性の原理」を意識して交渉に挑めばビジネスシーンにも役立てるでしょう。
「一貫性の原理」の具体的なエピソード
たとえば、なかなか商品を購入してくれない顧客と雑談をしていたとして、「最近、御社の業務効率化はできていますか?データの整理などで悩んでいないですか?」などと話題を振ってみましょう。仮に「そうだね。今のシステムが不調でね」と発言させることができれば、「一貫性の原理」は発動します。一度「システムが不調」と言ってしまった手前、発言を否定できにくい空気が生まれます。
そのうえで「では、新しいシステムのパンフレットをお持ちしましょうか」「よろしければデモ画面もお見せしますよ」と提案すると、否定できる根拠がないために了承を得やすくなるのです。
「一貫性の原理」は3つの要因で発動する
「一貫性の原理」は3つの要因のもとに発動するといわれます。まず、「コミットメント」つまり、「議題への関与」です。話者が振られた話題に対して何らかの意見を口にし、関与してしまうと「一貫すべき前提」が生まれます。次に、「公共性」です。発言が公的な場であればあるほど、話者は「一貫性」を強いるようになります。そして、「労力」が「一貫性の原理」を本格的に発動させます。話者は時間や手間をかけて導き出した意見に対し、「相応の対価」を求めます。つまり、「これだけ頑張ったのだから自分の意見を価値のあるものにしたい」と考えるのです。
「一貫性の原理」を強くする工夫
「一貫性の原理」を強めるには、ちょっとした工夫を盛り込みましょう。たとえば、「コミットメントの強化」です。相手から話を引き出すだけでもコミットメントになりますが、「アンケートに記入してもらう」「メールで詳細を書いてもらう」とより発言は具体的になり、相手は「矛盾のないように行動しなければ」と考え始めます。
「書く」という行為は「労力の強化」にもつながります。話す以上に手間のかかる行動を求めると、相手は「労力を割いたのだから重要なことであるべきだ」と連想します。「一貫性の原理」が強まると、大きな提案を持って行っても耳を傾けてもらいやすくなるでしょう。
「一貫性の原理」を応用するときの注意点
「一貫性の原理」を使うときは「誘導尋問」じみたプロセスにならないようにしましょう。たとえば、相手が自分から「うちの会社は経理システムがひどくて」と話すと「一貫性の原理」は発動します。しかし、「経理システムなどお困りではないですか?」と明らかな誘導尋問に「うん」と答えても、思考に「労力」が伴っていません。また、自らの意志で「コミット」した自覚も持ちにくいため、「一貫性の原理」は発動しにくいでしょう。
「一貫性の原理」を応用するためには、顧客の本音を自然に引き出すのがコツです。そのうえで、「一貫性」を守りたくなるような会話の流れを生み出しましょう。