コミュ障の人は営業職に向かないと思われがちです。営業は自社と顧客の利益を結びつける重要な役割を担っているため、会話力や人としての魅力が重要だというイメージを持つ人は少なくありません。人との会話が苦手なコミュ障の人が営業職に就くことになったら、自分につとまるのだろうかと不安に思うこともあるでしょう。しかしコミュ障にもいくつかのタイプがあり、営業に向いているケースもあるのです。コミュ障をメリットに変えるためには、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
アッパー系とダウナー系に分けられるコミュ障
コミュ障とは「コミュニケーション障害」の略です。しかし精神疾患としてのコミュニケーション障害というよりは、人とのコミュニケーションが苦手なことを表す俗語として使われるのが一般的です。SNSやオンラインゲーム、ネット掲示板などの場で使われるネットスラングとして発生し普及した言葉と考えればよいでしょう。そんなコミュ障には大きく2つのタイプがあることが知られています。アッパー系とダウナー系です。通常コミュ障といえば、人見知りやあがり症のダウナー系をイメージする人が多いでしょう。自尊心が低く決断力に欠け、話を振られるとパニックになってしまうこともあります。これとは対照的に、他人の意見は聞かず自分の話ばかりしたがるのがアッパー系のコミュ障です。アッパー系の特徴は、自分がコミュ障だと思っていないところにあります。空気が読めず自己主張が強すぎるので周囲に自己中心的だと思われがちで、避けられてしまうことも珍しくありません。しかし自分が間違っていると思えないため、他人を見下したり失敗を他人のせいにしたりする傾向がみられます。
無駄話が少ないことがコミュ障のメリット
営業といえば「つかみ雑談」が不可欠だと考える人は多いものです。一方で、インターネット時代を迎え「ものごと」の移り変わるスピードは早くなり、商売における時間やタイミングの重要性がますます高まっています。その結果、無駄な雑談を時間のロスだと考える人も増えているのです。興味のないことを長々聞かされることを良しとしない顧客への対応では、無駄話ができないダウナー系のコミュ障がメリットになる可能性は大いにあります。またコミュ障を自覚している人は若い世代に増えており、顧客のなかにも雑談が苦手な人が一定数いることは当然予想されます。顧客によっては「つかみ雑談」は最小限にとどめ、スピーディに本題に入ったほうが喜ばれることもあるのです。
アッパー系のコミュ障は営業に不向き
アッパー系のコミュ障の人は、自分の話ばかりをして相手の話を聞かないため顧客のニーズを引き出すことが苦手です。相手の都合に気を配ることができないようでは、とうてい成果にはつながりません。顧客の感情を逆なですることも多く、せっかく築いた顧客との信頼関係を壊してしまうおそれすらあるでしょう。アッパー系のコミュ障のやっかいなところは、自覚がないところにあります。上司が指導を試みたとしても、それを素直に受け入れることが難しいでしょう。このような人は何らかの精神疾患を抱えていることも考えられるため、慎重に対応することが求められます。
聞く側に回ることで成功する
ダウナー系のコミュ障の人は、努力次第で営業で成功する可能性を秘めています。無理に自分から話そうとするのではなく、聞き役に徹することが大切です。自分の話を聞いてもらうのが嫌いな人はめったにいません。相手の話にしっかり耳を傾け、分からないところは素直に質問することで印象は良くなります。潜在的な顧客のニーズを引き出すことに成功すれば、発注につながる可能性は低くありません。まずは「オウム返し」の手法を意識するところから始めてみましょう。オウム返しとは聞き手が話し手の会話の一部を繰り返すことです。こうすることで話し手は、自分の話の意図がきちんと相手に伝わったことを確認できるため、好感度が上がるといわれています。カウンセリングなどのシーンでも使われることの多いこの手法は、相手の使った単語やセリフをそのまま繰り返すだけなのでコミュ障でも取り入れやすいものでしょう。ただし、やり過ぎは逆効果です。「コミュ障なのに営業職になった」と不安に思っている人は、コミュ障を逆手にとってメリットに変えてしまいましょう。良い聞き手になることは営業職で成功するための近道です。