誰かからなにかうれしいことをしてもらったら、そのお返しに自分もなにかしてあげたい、と感じる人も多いでしょう。このような心理作用は心理学の用語で「返報性の原理」や「返報性の法則」と呼ばれています。返報性という心理作用は、ビジネスはもちろんのこと日常生活においても知らず知らずのうちに多くの人が使用しているものです。そこで今回は、知っておくと便利な「返報性の原理」とはなにかということについて詳しく解説します。
返報性原理って何?
「返報性の原理」は、「返報性の法則」とも呼ばれています。人からなにかをしてもらったときやされたとき、それと同じことを相手に返さなければならないように感じる心理的作用のことです。
この返報性の原理があるため、人は誰かからうれしいことやありがたいことをされたとき、それに対してなにかの返礼やリアクションをしなければ心理的な負担を感じます。
返報性を感じることにはどのようなものがあるの?
返報性を感じる行為には「好意」のほかに「譲歩」や「自己開示」などがあります。誰かから好意を持たれていると感じればその人に対して同じように好意を持つように感じますし、相手が譲歩してくればこちらもそれに応じて譲歩しようとします。また、心を開いてくれているように感じる人に対しては、こちらも心を開いて接しようとするものです。
返報性の原理と一貫性の原理の違いとは?
「返報性の原理」と似たような心理法則として「一貫性の原理」があります。「返報性の原理」は相手の行為に対してなんらかの返礼をしたくなる心理作用ですが、「一貫性の原理」は「過去に一度決心した行動や発言、信念などは貫き通したい」と感じる心理作用のことです。どちらの心理法則もビジネスや日常生活の場で多く使用されています。
日常でもよく見かける!返報性の原理の具体例とは?
「返報性の原理」が見られる具体的なシーンとして挙げられるのが、バレンタインデーです。バレンタインデーで女性からチョコをもらうと、ホワイトデーにはお返しをしなければならないと感じる男性も多いのではないでしょうか。そのような心理作用が「返報性の原理」なのです。
返報性の原理を使ったビジネスの方法とは?
「返報性の原理」を利用したビジネスの方法としてよく見られるのが、試供品や無料サンプルの提供です。無料で相手に試供品を提供することによって、相手にその商品を購入しなければ申し訳ない、というような心理状態を引き出そうとします。
また営業活動においては、懇切丁寧に詳しく売り込みの説明をされたら、相手は「契約を断るのが申し訳ない」という気持ちになることがあります。これもまた、返報性の原理を用いた具体例の1つといえるでしょう。
そのほか返報性の原理を用いたビジネス上のテクニックとして「ドア・イン・ザ・フェイス」があります。この方法は最初に相手が躊躇するような提案をします。そうして相手がその提案を断ると、こちらが譲歩した提案をします。そうしてこちらが先に譲歩することによって相手の譲歩を誘い、提案の承諾へと導く方法です。
日常生活でも使えるテクニック!
「返報性の原理」は日常生活の中でも利用することができます。例えば、恋愛において好きな相手にプレゼントを贈るという行為です。恋愛を成就するためにプレゼントが有効なのは、そうすることによって好きな相手に「これだけのことをしてもらっているのだから、その好意に応えないと申し訳ない」という気持ちを引き出すことができるためです。
また、誰かから「あの人は君のことが好きらしいよ」という話を聞かされると、それまで意識したこともなかったのに急にその人のことが気になり始めた、といった経験のある人も多いでしょう。
「返報性の原理」を上手に使用することにより、日常生活での人間関係が良くなるかもしれません。
返報性の原理を使用する際に気をつけるべきこととは?
「返報性の原理」はビジネスでも日常生活でも意識して利用すると効果的な心理法則ですが、使用する際には注意が必要です。というのは、この法則は節度を持って使用しなければ、詐欺や脅迫の手口と相手に捉えられてしまいかねない危険があるためです。
また使用する側が相手になにかをしてあげることに対して相手からの返礼を過度に期待していると、相手に対してネガティブな印象を持ってしまうことになります。そのような場合はむしろこの方法を使用したことによって人間関係が悪くなってしまうことにつながるでしょう。「返報性の原理」を使用する際には、相手になにかをしてあげることを楽しむ心の余裕が必要です。