企業活動の目的は「利益の最大化」にあります。そして、経営資源には限りがあります。人員や商品在庫、時間などは限られていて、それらは一般に制約条件と呼ばれます。このような制約条件下で利益の最大化を考えるときに有効な手法が「最適セールスミックス」です。ここではセールスミックスの概要について、基本的な概念やポイントについて解説します。また、モデルを用いた分析手法を紹介しながら、セールスミックスの有効性についても説明します。

最適セールスミックスとはどういう意味?

「セールスミックス」とは製品の生産量と販売量の組み合わせのことです。例えば、あるお菓子工場があったとして、エクレアとカップケーキを生産しているとします。ここで、エクレアとカップケーキをそれぞれ何個ずつ生産するか、また何個ずつ販売するかという組み合わせを考えたとしましょう。この組み合わせのパターンは、ほぼ無限です。このとき、合理的な経営者であれば、利益を最大化できる組み合わせを知りたいと思うでしょう。一方で、現実の生産現場では、そのような組み合わせの条件を自由に設定できるわけではなく、さまざまな制約を考える必要があります。例えば、エクレアを作るには1個あたり1分、カップケーキには1個あたり3分の時間が必要で、総生産能力が100時間とすると、それぞれの「時間」が制約条件です。このような諸々の制約条件を考えながら、利益が最大限になるときの生産量と販売量の組み合わせを「最適セールスミックス」と呼んでいます。

制約条件の中で利益を生む組み合わせを見つける

最適セールスミックスを算定するには、まず各製品共通の制約条件は何かに注目します。次に、各製品の貢献利益を算出します。最後に共通の制約条件下で単位あたりの貢献利益が大きい製品を算定します。単位あたりの貢献利益が大きい製品を優先的に生産設備の能力限界まで生産し、残った生産能力で貢献利益の小さい製品を生産するようにすれば、利益が最大化されます。なお、制約条件には人員や時間、消費量や需要量、生産能力など、さまざまな要素があります。たとえば飲食店であれば、従業員の数や作業時間、販売数量や販売価格、食材の在庫などが主な制約条件になります。また、共通の制約条件は1個の場合もあれば複数の場合もあります。複数になれば計算が複雑になり、線形計画法などを用いての立式や解析が必要となります。

制約条件が変われば最適セールスミックスも変わる

ある制約条件のもとでもっとも利益が上がる組み合わせが最適セールスミックスです。逆に言えば、そのセールスミックスが最適かどうかは、特定の制約条件に依存していることになります。つまり、最適セールスミックスは「流動的」なものです。制約条件には大きく分けて2種類あります。1つ目は、生産設備の稼働能力、人員数、販売数量、輸送能力など、ある程度恒常的なものが挙げられます。2つ目は、生産ラインの不具合などによるメンテナンスで一時的に工場の稼働時間が減少するなど、突発的なものです。極端に言えば、最適セールスミックスは、そのような突発的な制約条件の変化にも即座に対応して、更新されなければなりません。

限界利益線モデルのCVP分析に活用

最適セールスミックスを考える際には限界利益線モデルを用いたCVP分析がおすすめです。CVP分析とはCost-Volume-Profit Analysis の略で、損益分岐点分析とも呼ばれます。「コスト(C)= 変動費+固定費」、「販売量(V)」、「利益(P)」の関係について分析する方法です。まず、売上高から変動費を引いたものを「限界利益」と呼びます。この限界利益を売上高で割ると「限界利益率」が算出できます。さらに固定費を変動費と売上高で割ると「損益分岐点」が計算できます。損益分岐点とは、損益がゼロ(限界利益=固定費)になる状態を指します。損益分岐点を算出すると、変動費・固定費のどちらを改善すれば利益が上がるのかがわかります。簡潔に説明すると、限界利益率の高い商品やサービスの販売を優先的に行えばセールスミックスの利益最大化を図ることができること、さらに損益分岐点にもっとも早く到達できること、時間的な余裕があるうちに最大利益を実現できること、経営資源の供給限界がくる前に最大利益を実現できることなどが、CVP分析によって明確になります。