営業職を採用するとき、経験者を選ぶと即戦力として期待できます。しかし、決して未経験者が経験者よりも劣っているわけではありません。見方を変えると、経験者にはない未経験ゆえのメリットで企業に貢献してくれる可能性もあるのです。営業の採用過程においては未経験者の魅力も踏まえたうえで、どんな人材を採用すべきかを明確に考えておきましょう。ここでは、あえて営業未経験者を採用する意味について詳しく解説していきます。

経験があれば成績が上がるとは限らない

営業職を募集するとき、営業経験がある人が即戦力になると思いがちです。しかし、すべての経験者が優秀な人材とは限りません。プロフィールで「経験者」とうたっている人の中には、他社の営業で失敗して辞めている人も多いのです。こうしたタイプの経験者は、採用したからといって期待しているほどの能力を発揮してくれない恐れがあります。むしろ、未経験者よりも好条件で採用してしまってコストが余計にかかってしまう場合もあります。
営業経験者を採用する際には、「何が原因で前職を辞めているのか」「営業職としての心構えがきちんとあるのか」を見極めましょう。人間関係のトラブルや仕事のミスで辞めている人材は同じ失敗を繰り返す可能性があります。心構えがゆるい人は、経験者らしい仕事ぶりを期待できません。

未経験に秘められた可能性

営業未経験者の中には、営業職としての資質を十分に持っているにもかかわらず営業職を経験してこなかったという人も含まれています。たとえば、「人あたりのよさ」「責任感の強さ」などは営業に欠かせない資質ですが、同じ能力を求めている現場は多いのでたまたまこれまでの人生で営業に就いてこなかった人もいるのです。仮に採用過程において、営業職以外の現場で活躍していた人材が応募してきたら「今まで成功してきたからには何か光るものがあるはず」と前向きに考えるのが肝心です。そして、採用過程を通して、その人の成功の理由が「営業職にも応用できるものかどうか」を見極めていきます。
「経験・未経験」は決して能力を証明するものではないので、未経験者を初めから門前払いすべきではないでしょう。

技術営業は技術経験がある人の方が有利

営業は基本的にはやる気やコミュニケーション能力など、人間性の高さで乗り切れる局面が多い仕事です。しかし、なかには専門的な知識やスキルを求められる営業部門もあります。たとえば、「技術営業」は知識量が豊富でなければ顧客に信用されないでしょう。特定の技術を提供する仕事では、営業が顧客以上の知識と理解度を要していなければセールスのしようがありません。こればかりはやる気だけでカバーできるものではなく、営業とはいえども技術知識を勉強する必要があります。
その点で、技術者出身の人材は技術営業に適性があります。ほかの部門でも、営業の内容によっては営業未経験者の中にも適任者はいます。営業以外の部門から採用することで、企業の仕事に幅を持たせられる可能性もあるのです。

経験よりも持ち合わせている性格やスキルに注目

営業職で成功するかどうかは、経験があるかどうかよりも営業職の適性に左右されます。そして、営業職の適性は「営業の経験」だけで磨かれるものではありません。
営業に欠かせない「コミュニケーション能力」はチームワークから学び取ることができます。たとえば、研究所や販売店で働いていても、組織の中で人との接し方を上達させてきた人材はたくさんいるでしょう。「粘り強い性格」を持っているかも営業の大きな資質です。工場で働き、ノルマ達成のために日々努力してきた人材ならタフな精神力も養われていると期待できます。
優秀な営業経験者は確かに企業の大きな戦力になりえます。しかし、同じくらいの逸材がどこに眠っているかは分かりません。特に理由もなく「経験者」「未経験者」という採用基準を設ける必然性はないのです。